さかのぼること2001年、カナダ。1ヶ月に1基ずつ原子力発電所を建設するという米ブッシュ大統領の政策に反対する「カナダの自主停電運動」がヒントになっています。

このカナダの運動を見て「日本でもやってみよう」と言い出したのは、明治学院大学教授の辻信一さんでした。辻さんは、環境問題をテーマに活動する「ナマケモノ倶楽部」というNGOを作った方です。一方で辻さんは「カフェスロー」をはじめとする社会的起業にもとりくんでいます。
まずはこのお店のイベントとして始めました。カナダの「自主停電運動」は真っ暗にしてやるんですが、それでは子供が暗闇に驚いて泣いてしまいます。そこで辻さんは、真っ暗闇の中でろうそくを灯しながらやることを思いつきました。「あたたかいろうそくの灯りがともった暗がりのカフェで過ごす時間はとても心地がいい」参加していただいた方々からの声もまた、あたたかいものでした。
「カフェスロー」での「自主停電運動」の評判の良さに辻さんは嬉しくなり「大地を守る会」(有機野菜の宅配サービスをしており、全国の農家と生活者の間をつなぐ活動をしているNGO)の藤田和芳さんを声をかけ、藤田さんは「大地を守る会」を中心に秋に「キャンドルプロジェクト」を実施しました。参加したひとに書いてもらった作文には、心を打つ言葉がたくさん並んでいました。 「いつもお茶をたてるときは、15分しかかからなかったのだけど、ろうそくの灯りだけでやったら1時間かかりました。手元が不安定で大変だったけど、ゆっくりと丁寧に、時間をかけてたてたお茶は、とても美味しかったです」 「原発反対」と100万回叫ぶより、1人1人が生活のワンシーンでこういう時間を自由に体感していくことが、いつかほんとうに平和な暮らしへとつながるのではないか。集まってきた言葉を読んでいて、2人はそう思ったのです。
辻さん、藤田さんに加え、マエキタさん、竹村さん、枝廣さんが集まり、もっと多くのひとが気軽に参加できるようにという想いをこめて、2003年夏至の日、「100万人のキャンドルナイト」という名前をつけ始まったのです。 遠い海の向こう、カナダの運動を見て、日本で始まった「100万人のキャンドルナイト」。いつの日か、カナダでも、そして世界中のひとが、夏至の夜ろうそくの灯りをともして過ごしてくれたなら、月に立って見つめる地球には、あたたかいくらやみのウェーブが広がるのです。わたしたちはこの日を願ってやみません。