結火・むすび / Vol.11

ラマダン
ラマダーンはヒジュラ暦の第9月。イスラム教徒の義務の一つである「断食(サウム)」では、この月の日の出から日没までのあいだ、飲食を絶つ。イスラム暦は純粋な太陰暦で、閏月による補正を行わないため、毎年11日ほど遅れ、およそ33年で季節が一巡する。そのため「ムスリムは同じ季節のラマダンを人生で2度経験する」と言われる。「ラマダーン」を「断食」のことと誤って捉える人も少なくないが、月名である。また、1ヶ月間という期間を完全に絶食する訳ではなく、日没から日の出までの間に一日分の食事を摂る。この食事は普段よりも水分を多くした大麦粥であったり、ヤギのミルクを飲んだりする。
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辻さんが暗闇カフェをやり始めた頃、9.11が起こりました。その後アメリカを中心とする勢力とイスラム世界との間に深い溝ができてしまいます。イスラムの文化には、ラマダンという宗教行事がありますが、辻さんはラマダンキャンドルナイトというのもやったそうです。

「イスラム暦のラマダン月には、夜明けから日の入りまで断食をします。ラマダンってすごく禁欲的なものだという先入観をもって見ていたんだけど、何年か前にモロッコに行ってみたら、むしろみんなお祭り気分で楽しそうでした。特に、日の入り後の食事を待ってるときは、大の大人たちまでみんなソワソワ、ワクワクしている。

あくまで日の出、日の入りという自然の時間に従って、みんなが生きている姿が、謙虚でいいなと思いました。で、学生たちと冬至の日に、ラマダンキャンドルナイトをやることにしたの。日の入りを待って火を灯す。そして、みんなそれぞれが持ち寄った食べ物の説明をしてくれるんだ。今日はこんなお米でおむすびを作ってみました、とか。その食事のことは本当に忘れられないです。すごくいい、パーティだったなあ。」

100万人のキャンドルナイトは、よくある「環境イベント」とは大きく違うところがあるんですよね。

「そう、キャンドルナイトは、パーティ。そこでは、ふだんの忙しい生活では忘れてしまいがちなSmallで、Slowで、Simpleいう3つのSが姿を現して、ぼくたちの価値観を組み替えてくれる場所なんだと思う。」

キャンドルナイトとは、辻さんにとって、そういう1回1回がすごく思い出深い、大切なパーティです。

「キャンドルナイト、エブリディです。楽しい食卓は毎日もちたいじゃないですか。日々の小さな気づきが重なっていって、そういうことが当たり前になったらいいなあと思うんだ。」

お話を聞いた皇居の庭で、辻さんが座った大木の根っこは、ゾウの足のように力強く生え、木々の間をさっと爽やかな風が吹き抜けました。辻さんが呼びかける力強い声が空まで届いて、地球が聴こえない声で答えてくれたような気がしました。

むすび書き:香音(かのん)